第3章 合宿へいこう!
「そうなんですか、何年生ですか?」
「2年生になるはずだ。アメリカに住んでるやつでな、とても華麗なプレイをすると聞いた」
「アメリカに知り合いがいるんですか?」
「いちおうな。全日本時代の知り合いがあっちにいるんだ」
「全日本……」
さすが、というか……。
「そんなすごいものでもない」
あたしがあんぐり口を開けて監督を見てると、監督は顔を赤らめて言った。
「いやすごいですよ! 日本代表じゃないですか!」
「世界では、通用しない……日本人の体格では、なかなかに難しい世界なんだ」
「紫原なら行けるんじゃないですか? 体格」
「このまま育つなら、世界へと思うのだが、あいつ自身がそれを望まないだろうな」
「……たしかに」
英会話には不自由しないだろうけど、海外にいる紫原は想像できない。
このまま身長が伸びていくのなら、海外選手に引けを取らないのは確かだろうけれど、もう止まってしまうのだろうか? 十分大型だけど……ちょっと気になる。
荒木監督は化粧水をパンパンと手で叩き込み、自分に気合を入れた。
「今日も頑張ってもらうぞ」
「はい」
「昨日はすまなかったな」
「いえ、来てくださって助かりました」
「あたしは、あいつのこっちでの保護者だからな。ったく、図体ばかりでかくても、人以上に手がかかるガキだ」
やれやれと言わんばかりに監督は首を振る。
その呆れた様子にあたしは少し笑ってしまう。
どこかで、子ども扱いされてる紫原にほっとしている自分がいるのが分かる。
相手にされていないことが、うれしいのだ。
最低だなあ、あたし。