第5章 烏養繋心が語る コートの天使
語っちゃいます
あいつは、小学1年からバレーを始めたんだ。
最初はスッゲー下手くそでさ
でも、あいつは諦めなかったんだ
いつも最後まで、練習してボロボロになって
どんなに疲れても、弱音を吐かねースッゲーやつだよ
あいつの力があらわれたのが、小学4年生の時だ。
たまたま、チームメイトのやつが試合中怪我してな
桃に出番が回って来たんだ
その時桃が打ったのは、小学4年生ではあり得ない
ジャンピングサーブだったんだ
その一球が桃を変えた
あいつのサーブのおかげで、チームは全国で優勝したんだ。
まだ、4年生だった桃にテレビは注目した
当たり前だよな
高校男子のサーブより威力が強かったんだ
でも、桃はそんなのにおごらずに一生懸命努力した
周りも桃の事を尊敬した
小学5年生の時、桃にはスカウトが来た
中学でも、高校でもない
全日本からだ
周りは息を飲んだ
身長も大きいとは言えず小柄な桃に
わざわざ監督が頭を下げて桃に会いに来たんだ
その時の桃はスゲかったよ…
固まってたからな
でも、桃は言ったんだ
「私は、頭を下げられるほど凄いわけではありません
今の私があるのはこの仲間達のおかげです」
そう言い切ったんだ あいつは
それからも、桃は努力して努力して頑張ったんだ
でも、悲劇は起きた
あいつは練習中にチームメイトと衝突しそうになって空中で方向を変えたんだ
着地した時桃を待っていたのは、泣き叫ぶほどの右膝の痛み
病院での診断結果は
絶望的だった
お前らも聞いたことがあるだろう?
前十字靭帯断裂 後十字靭帯断裂 半月板損傷
桃の右膝はバレーをするものにとって最悪と呼ばれる
‘デビルトライアングル’になったんだ
手術の成功率は30%
手術をしなくても、バレーはできるが膝に来る痛みは想像を絶する痛みだ
でも、桃は言ったんだ
「バレーができるのならば体がどうなろうと構いません
この体はバレーをするために生まれたんです」ってな
あいつはトレーニングを真剣にした
周りも止めなかった
あいつの膝は前みたいに動くまで戻ったんだ
だけどな?手術をしてないってことはいつ痛くなってもしょうがないってことだ
桃はそれでチームメイトに迷惑をかけないため
コートから降りたんだ