第1章 新たな出会い
「ちょっと、飲み物かってくる。」
不意に聖美さんが立ち上がり言った。
そして何も持たずに走り去るように教室をでた。
「あいつ財布もってったか?」
「んーん。手ぶらだったような…。」
聖美さんが出て行ったドアを二人は苦笑いで見ていた。
「僕ものど乾いたし、ついでに見てくるよ。」
「よろしくー」
嘘。
飲み物は鞄に入ってる。
ただ、聖美さんが気になっただけ。
自動販売機までいくと、聖美さんが自動販売機を背に座り込んでいた。
膝を抱えて、頭を埋めて。
「聖美さん?」
近くによると、聖美さんは顔を上げた。
僕の瞳に映ったのは今にも泣きだしそうな聖美さん。
いや、今泣いていたんだ。
潤ませた瞳をこちらに向けて驚いていた。
「手ぶらで教室でたから、心配で…。」
「あぁ、そうだった。ごめんね。」
「いや、いいよ。それよりも、大丈夫?」
僕は、聖美さんの頬に手を添えて、親指で涙の跡をなぞりながら聞いた。
眉が下に向き、溢れ出す涙。
理由はわかってる。
辛かったんだよね、雅留くんたちが話してて。
苦しかったんだよね。
僕は何も言わずにポケットからハンカチを取り出し、そっと涙を拭いてあげた。
僕は、この子を守りたい。
この子に笑っていてほしい。
「僕も、協力するから泣かないで。」
そっと告げた言葉。
涙を流しながらも、ふっと微笑んでくれる。
あれ、おかしいな。
なんだか僕も泣きそうだ。
「大丈夫、僕がついてるからね。」
ただ僕は、友達になりたかっただけなんだ。
僕は、友達でいられれば、それでいいんだ。
end