第8章 【団栗ころころ】
「これ、………どんぐりの」
乾燥させた金魚草の裏に
ひっそりと隠れるようにして
それはあった。
刺繍を施した巾着袋
くたりと腰を折るように
頭を垂れてしまった巾着から、
カツッ コツン
零れていたのはどんぐりだった。
「何だよ……こんな、はは
トト○じゃないんだからさ」
漏れてしまった笑いは
思ったよりも全然渇いてる。
軽く握った拳をおでこに
当てると、どうしてかな
なんか視界がぼやけてきた。
「…………っ紗英」
カツン、落ちたのは僕の涙か
それとも君のどんぐりか
こんな風に訴えるくらいなら
今すぐ僕の目の前に来て
僕を殴ってくれればいいのに。
ねえ紗英、ごめんね。
「僕、……っ、また、こうやって
……君を傷つけることしかできない」
【八ノ章】
団栗ころころ___終