第7章 【パンチヒーロー】後編
時折舌に当たるのは
牙、なのかな……。
鬼灯様の口内に舌を
絡め取られるたび
チクリとした刺激が走る。
それが、どうしようもなく甘い。
「ん、は、ぁ……っ」
湯けむり以上に熱っぽい
彼の吐息に呼吸を奪われ
キスの隙間から
恥ずかしい声が漏れた。
「ここ……痕、ついてますね」
唇から耳、首筋をつたって
下ろされていくキスの途中
私の首筋に赤い痣を
見つけて、鬼灯様は
口の奥の方で舌打ちをした。
直後、襲ったのは
肌を刺すような痛み。
「痛……っや、あぁっ」
「億万歩譲って白豚の後なら
まだしも、……あのような人間の
残り香がするというのは、」
赤痣を恨めしげに噛むのは
屈辱を何より嫌う、鬼の牙
「どうにも許せませんね」
鬼灯様は鋭く言ってみせて、
一層強く牙を食い込ませた。