第12章 愛するための勇気
川の畔にひっそりと建つ
小さな小さな小屋
朽ちかけた扉を
開けるとそこは、
ひどく穢れた臭いがした。
地獄や現世で嗅ぐ
それなんかとは
比べものにならないほど
邪で薄汚くて醜い。
人間の擬態をどうにか
保っているから
耐えられるけど、
本来の姿だったら
あまりの醜悪な臭いに
気を失ってしまうだろう。
「おや……これは、これは。
また随分と……業の深い奴等が
やってきたもんだねェ……?」
腐った肉の集合体を
思わせる、それ。
老婆なのか
化け物なのか
性別も、種族も
何とも分からない姿に
身を堕としたそれは、
ゆっくりと上唇を
捲りあげて笑った。