第10章 花割烹狐御前
皆さんお久しゅう。
こちら、花割烹狐御前
しがないポン引き狐の
檎(ゴン)でごぜえやす。
どうぞ今後ともご贔屓に
……え?もう物語終盤?
そりゃあないぜ旦那。
わしだってもそっとこう、
色気のある出番をですなァ
あ、いや……あいすみません
ちゃんと話進めるので
金棒だけはどうかご勘弁を。
と、まあ気を取り直して──
今日はなんとも珍しい
お客さんが訪ねていらっしゃった。
「紗英……、なのか?」
「うん。でも、今は薺っていうの。
檎、あのね……えっと、ただいま」
こりゃさすがにたまげた。
でも同時に嬉しかったねェ。
木偶の坊のわしですら
思わず落涙しそうに
なったってもんでさァ。