第40章 淡い愛情【黒子/N】
『テツくん、ずっと聞こうと思ってたんだけど、その安産祈願の御守り何?』
「えっ……えっと……」
『もしかして私があげた御守り?』
僕はスポーツバッグに正月に悠鬼さんから貰った恋愛成就の御守りともう一つ、安産祈願という名の必勝祈願の御守りを頂きました。
間違えてる事を僕はずっと言わずに付けていて、ついにバレてしまいました。
『何で言わないの!』
「すみません、僕は悠鬼さんの気持ちが嬉しかったので……」
『もう!部活の人に笑われたでしょー?』
「いえ、特には……」
御守りを笑われた事よりも僕に彼女が出来た事で騒がれたので、御守り自体にはそんなに触れられなかった。
『私買い直して来るから!』
「えっ、今からですか?」
『今から!テツくんにそんな物持たせてるのが申し訳ないし、私が恥ずかしいよ!』
「なら僕も一緒に行きます」
『神社は逆方向だから戻らなきゃいけないし……』
「デートの口実……ではダメですか?」
『デート……』
「そういえば……まだデート出来てませんね」
自分で提案しといて何ですが良く考えたら、キスしたり放課後一緒に帰ったりはしてますが、まだ一度もデートをしてませんでした。
『テツくんとデートしたい!』
「では戻りましょう」
『うん!』
神社は帰り道と逆方向なので、来た道を戻らなければいけませんが、何かその時間も楽しかったです。
『御守り売り場閉まってる!?』
やっと辿り着いた時には売り場が閉店していました。
のんびり歩いてその時間を堪能していたからでしょうか、悠鬼さんは目を見開いたままショックで放心状態です。
『どうしよう!せっかくここまで来たのに!』
「悠鬼さん、今度の日曜日空いてますか?」
『うん、空いてる』
「なら改めてデートしませんか?その時にまた買いに来ましょう」
『デート……一日テツくんと居られるの!?』
「……ッ……はい」
まさか御守りを買える事ではなく、僕と居られる事を喜ばれるとは思わず、再び顔を背けてきゅんと高鳴る胸を押さえる。
あまり気付かれたくありませんが、貴女相手に余裕がなくなりそうです。