第35章 抑えられない想い【虎太/N】
ワールドカップへの出場が決まった三つ子の長男 虎太は、明日からU-17の合宿に行く事になった。
その為、隣に住んでいる幼馴染みの悠鬼が、忙しい母親の代わりに荷物を用意している。
『ジャージとユニフォーム、タオルと……シャンプーとかも持って行くの?』
「向こうで用意してくれるって」
『そう……あっ、パンツは新しいの買ったからそれ持ってって!』
「……うん」
「うん、じゃねぇよ!!……また、んな恥ずかしいの買って来やがって!」
『可愛いじゃん!』
「可愛くねぇよ!……虎太も嫌なら嫌と言えよ!」
「悠鬼が選んだなら嫌じゃない」
リビングでスポーツバッグに荷物を詰めていると、ビニール袋から新品の下着を出した悠鬼。
それをソファーから見ていた凰壮は、毎回悠鬼の買って来たそれに文句を言って来る。
虎太は悠鬼のする事なす事に一切文句を言わず、幼い頃からの事なので竜持は諦めている。
悠鬼の買って来たパンツそれは……黒地に大きいハートマーク。
虎太が黄色、竜持は緑色、凰壮は赤……しかも高校生になっても未だに柄パンでお揃い。
そういう可愛い感じの下着ばかりなのだ。
「何を騒いでるんですか?浴室まで聞こえて来ましたよ」
『凰ちゃんが文句言うの!』
「体育の時なんて大変だろうがッ!」
「そうですけど……何を今更言ってるんですか?」
「虎太だってこれじゃ風呂入れねぇだろ?他の奴等と一緒なんだろ?」
「……っ……大丈夫だ」
「無理すんなよ」
入浴を済ませてリビングに入って来た竜持は、タオルで髪を拭きながら凰壮の機嫌が悪い理由を聞く。
凰壮の気持ちは竜持も凄く共感しているが、散々止める様に言っても聞いてくれないので、竜持は中学生くらいには諦めていた。
そう話していると、悠鬼は扉の前に立っている竜持に前から抱き付くと、後ろに顔を出して竜持のズボンの中を覗く。
「!?……悠鬼さん」
『竜ちゃん履いてくれてるよ!』
「それも止めろっつーの!」
『何でぇ!?』
「少しは恥じらいとかねぇのかよ!」
『うぅ~……小さい頃はそんなに怒らなかったのに……』
「凰壮くん」
「……ッ……だってよー」