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淡い恋心

第33章 たった一人の想い人【半田/N】



「って事があって……」

「うん、それこの間悠鬼ちゃんにノロケられた」

「!?」

修学旅行が終わった後、半田は川藤と喫茶店でお茶をしていた。
修学旅行での出来事を一通り話していたが、既に先に悠鬼から聞かされていた川藤は淡々と告げた。

「ノロケって……良く考えたら、友達も作れない俺が彼女とか……おこがましいと思うんだけど……」

「良いんじゃねぇの?悠鬼ちゃんは彼女だけどお前にとって家族見たいなもんだろ?……別に身構えなくても悠鬼ちゃんは半田の事理解してる一人なんだからさ」

「そ、そうだな……悠鬼なら気楽かもな」

「でも悠鬼ちゃんは意外に積極的だなー……淑やかだと思ってたから……で、帰って来てから何か変化はあったのか?」

「いや、特に何も変わってない。学校でも関わらないし、習字と料理を習いに来てるだけだ」

「半田……本当は悠鬼ちゃんだって学校で普通に半田と過ごしたい筈だ。たまには自分から恋人らしい事もしろよ」

「恋人らしいっていきなり言われても何をしたら良いんだ!」

「自分で調べろ!」

「薄情だー!」

初めて恋人が出来て恋愛相談も兼ねて話しているのに、川藤と話しても何も解決しなかった。
旅行前に友達を作ると宣言したがそれは叶わず、幼馴染みと恋人になって学校生活はあまり変わらないまま、未だに半田は孤独の身だった。









数年後、悠鬼は半田の住んでいる五島に何度か足を運び、良く子供達と習字をして楽しんでいる。

そして現在は半田と二人で机に向かって、静かに字を書いている。

「悠鬼、ここ少し違う……もう少し跳ねて良い」

『あら、ふふっ……はい、先生』

「バカにしてるならもう見てやらないからな」

『ごめんなさい!……違うの、高校の時は良くこうして清くんが後ろから教えてくれてたなぁって懐かしくなってしまって……』

「あぁ、今じゃあまり見てやれてないからな……悪い」

『そうねぇ……じゃあ、もう少しこのままで居て頂戴。清くんに抱き締められている時が一番幸せなのよ』

「悠鬼、こっちで一緒に住むか?……俺はここで習字の先生になろうと思う」

『!?……はい、貴方が決めた事なら何処までも付いて行きます』

「あぁ」


Fin.
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