第32章 越えられない距離【吉良/N】
『ひなちゃんが男子校に居る!?何で?』
「分からない。でもあの子の面影が残ってて……」
悠鬼は幼い頃から同じ児童養護施設で育った吉良 麟太郎に、同じく養子として引き取られた中山ひなこの事をファミレスで相談されていた。
高校一年生になった悠鬼は未だに施設で暮らしているが、時々吉良と会ってこうして談笑している。
『ふーん、なら私が見て来てあげようか?』
「それは駄目だ」
『何でー!?私なら一発で分かるよ?最近まで一緒に居たし!』
「男子校に行かせる訳にいかないだろう」
『大丈夫だよ!私もひなちゃんに会いたい!』
「駄目なものは駄目だ。絶対に来るなよ?」
『麟くんのケチ……』
『如何にも男子校って感じだなぁ……ひなちゃんに会えるかなぁ?』
「お前、ここで何やってんだ?男子校だぞ?」
『ん?』
翌日の朝になって学校に行く前に獅子吼学園にやって来た悠鬼は、校門の前で男子校の校舎を物珍しそうに見上げて居た。
そこへパーカーとヘアバンドを着用した、金髪の男子生徒が話し掛けて来る。
『ここに中山ひなこって言う可愛い子が通ってますよね?何処に居るか知ってますか?』
「えっ、中山?知らねぇけど……あっ!ひかる、金春!はよっ!」
「斗々丸、おはよう」
『ひなちゃーん!会いたかったよぉー!』
「「ひなちゃん!?」」
「悠鬼ちゃん!?何でここに!?」
悠鬼が捜していた人に斗々丸が近付くと、丁度ひなこは金春と一緒に登校して来たので、感激のあまりに勢い良く抱き付く。
本名で呼ばれた事と、悠鬼の登場に驚いたひなこは、慌てて物凄く焦る。
『麟くんがひなちゃんがここに居るかも知れないって言うから、私が確かめに来たの!私ならひなちゃんの事分かるでしょ?』
「麟くんって誰?」
『麟くんだよ!ひなちゃん良く遊んでたでしょ?』
「つーか、中山ひなこって何だよ?」
「そいつは鬼ヶ島ひかるだろ?」
「!?……悠鬼ちゃん!ちょっと来て!」
『えっ……ひなちゃん!?』
今はまだバレる訳にはいかないと、ひなこは悠鬼の手を掴んで少し離れた場所でコソコソ話し出す。