第26章 銀髪の貴公子【イザーク/N】
「うちの高校は大学までエスカレーター式だ。あまり低い点数だと進級出来んだろうが」
『えっ、イザークはうちの大学行くの?』
「あぁ……ユウキはどうなんだ?」
『私は受験したくないからうちの大学に行くよ!……でもイザークだったら、もっと……』
「仕方がないだろう……俺の好きな奴は馬鹿なのだから」
イザークは机に頬杖を付き、真っ直ぐ私の方を見ながら言って来る。
彼の言って居る事が直ぐに理解出来ないでいる私は、脳内に疑問符をたくさん浮かべて目を丸くするばかり。
『何で私を見てっ……んっ……』
戸惑って居るとイザークは私を不意に引き寄せ、彼の美麗な顔が目の前に現れる。
決して優しくはないけれど、こうして私の為に時間を作って勉強を見てくれている。
イザークに唇を奪われた私は、やっと理解した。
これが彼なりの優しさなんだと……
『イザークっ……』
「何とも思っていない相手に、俺がこんな無駄な事をすると思うのか?」
『思わないけど……解んないよ。優しくないもん……』
「うっ……そうだな、意地悪が過ぎたか……なら詫びに春休みにユウキの行きたい所に付き合ってやる」
『ホント!?』
「80点以上取れたらな」
『全然優しくないよ!イザークのバっ……んぅー!』
こいつには目が離せない程、俺を夢中にさせられる。
頭の悪いこいつと俺が釣り合う訳ないと思うだろ?
だがそんな馬鹿が俺を飽きさせない。
こいつの為に無駄な時間を作って、凄く構いたくなる。
面と向かっては言えんが、俺の傍で笑ったり怒ったり困ったりと、様々な表情を見せるユウキが好きだ。
ふっ、もう少し優しくしてやっても構わんか……
『イザーク!見てぇー!!』
「だから廊下を走るなと『数学87点だって!凄くない!?』」
「ほう、80点を超えたか」
『うん!これで春休み遊べるよ!』
「何を言っている、春休み中に間違っているところを復習するんだ」
『えっ……えぇー!?』
「ふっ……冗談だ、約束通り春休みはお前に付き合ってやる。考えて置けよ?」
『うん!いっぱい遊びたい!』
「浮かれるのは構わないが、春休み前に復習は済ませて置けよ!でなければ約束はなしだ」
『……っ……やっぱり優しくないよ』
それでもこの人が好きな私はMなのかな?
Fin.