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淡い恋心

第25章 真面目なセクハラ【尊/N】



「それは俺が困る」

『えっ』

尊が何かを呟いた様に聞こえたが私の耳にはハッキリ入って来ず、そっと顔を上げて聞き返そうとした時私の躰は温かい物に包まれた。
尊が抱き締めてくれた事に気付いた私は一瞬驚くが、彼の胸に顔を埋めてぎゅっと抱き締め返す。

「悠鬼が男になったら俺が困る」

『……何で?』

「俺にはお前の気持ちを全て理解してやれる訳じゃない……だが、男だったら悠鬼を好きにならなかった」

私がもし男になったら困ると言った時、傍を通り掛かった車のライトで一瞬尊の顔が見えて、その時の彼の目は真っ直ぐ曇りのない眼差しを私に向けてくれていたと思う。

『私も……っ……』

私も同じ気持ちだと告げようとしたがそれは彼の唇で塞がれてしまい、私は代わりに目一杯彼を抱き締めて唇に想いを乗せた。

『尊……私、もっと頑張って見るよ。私も諦めたくない』

「あぁ、早く追い付いて来い……悠鬼」

私達は手を繋いで、再び帰り道を走り始めた。




「悠鬼ちゃん!?どうしたの!その髪!?」

『えへへ!イメチェン?』

「イメチェンって……」

「綺麗だったのに」

休み明けに私が部室に姿を見せると、部員全員が私の見た目の変貌に驚愕している。
私はあの後休みを利用して、腰まであった長い髪をバッサリ切って所謂ベリーショートにしてしまったのだ。

尊も大分驚いて近付いて来ると、私の髪をそっと撫で若干暗い顔を見せて来るので、彼の顔を覗く様に見上げると吹っ切れた様に笑みを浮かべる。

『髪が元の長さに戻るまでには、成果を上げて見せるよ!……願掛け的な?』

「……ふっ、そうか」

私の言葉に安心した様に笑みを見せてくれると、尊の手が私の後頭部に触れて来て引き寄せられ、尊は人前だという事を気にせずに私の髪にキスを落とす。

少し恥ずかしさはあったけど、私はこれを気に気合いを入れ直した。

いつか尊の手と合わせられる日が来るのを夢見て



「クソッ!後輩に先越された!」

「羨ましいですぞ!藤原氏!」

「俺も彼女欲しぃ~!!」

「悠鬼ちゃん可愛いっ」


Fin.

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