第24章 歪んだ愛情表現Ⅱ【優一郎/B→N】
新宿五丁目の交差点付近でフェリド達と日本帝鬼軍が戦っているのを目にしたレンは、高いビルの上からその様子を伺っていた。
優一郎が地下都市から逃亡した後、レンは人間を見るなりいつも優一郎の姿を捜していた。
(虫けらがウジャウジャと……煩わしいっ………ほぅ……)
フェリド達に加勢する気等ない為干渉せずにいたが、優一郎とミカエラが久し振りの再会を果たした事で、レンの目にも優一郎の姿をハッキリ映る。
「ミカっ……お前、ミカなのか!?」
「優……ちゃん……」
「何あれ!可愛いー!」
「初めて貴様と意見が合ったな。確かにあれは可愛い」
「あれぇ?君が僕の仕事に付いて来るなんて珍しいねぇ、レン」
「貴様は貴様で好きにしろ……私の目的は一つだ」
気配を消してフェリドの横に来たレンは、優一郎の泣き顔はとても愛らしいので、不本意だが素直にフェリドの言葉に同意する。
対してフェリドの方は最初からレンがいた事には気付いていたらしく、相手が隣に来ても驚く素振りを見せず、レンが自分の方からフェリドに近付いて来るのを意外に思う。
そしてレンの視線は、ミカエラがずっと目を離さず見ている優一郎へと向く。
「百夜ミカエラ、貴様の目的も優一郎か?」
「も?」
「私は優一郎を人間共から奪えればそれで良い」
「それって……どういう?」
「あれは私の物だ。人間にも吸血鬼にも……無論、貴様にも渡す気はない」
「なっ!?」
「随分ご執心だねぇ……そんなに良かったのかなぁ?優ちゃんが」
「……兎に角、私の邪魔はするな。手を出したら貴様等から殺してやる」
そう言葉を残してレンはミカエラ達より更に前へ歩を進めると、優一郎と向かい合ってフッと軽く笑みを浮かべ、迎え入れる様に大きく両腕を広げる。
「久し振りだな、優……私を忘れては居ないだろうな?」
「!?……れ、レン?何で」
「愚問だな、決まって居るだろう……お前を迎えに来てやったんだ、私の処へ戻れ」
「行く訳ねぇだろ!」
「私の付けた傷が疼くだろう?優」
「……っ……やっぱりお前が……」
レンは広げていた右手で自分の心臓に触れ、四年前に自分の所有物として付けた証を主張する。