第3章 微かに伝わる熱【3】
『嫌われているのかと思いました』
泉が耳元で囁く。
香夜は泉の腕の中にいた。
そんなことないです、と言葉を発しようにも胸がいっぱいで話せそうにない。香夜はふるふると首を左右に振った。
香夜さん、
泉は腕の力を緩めると両手で香夜の頰を包み込み、瞳を覗き込むように見つめた。
『貴女が好きです』
涙が香夜の頰を伝う。
泉が指先でそっとそれを拭った。
それからゆっくりと顔を近づける。
香夜は静かに瞳を閉じた。
重なった唇から微かに伝わる熱にめまいがしそうだ。
唇が離れる気配がして瞼を開く。
微笑む泉に釣られて香夜も小さく笑みを浮かべた。
『これからは俺に敬語は使わないでください』
『は……、うん』
『使ったらその場でキスしますから』
『え?!』
end.