第2章 *ずっと一緒に【縁下力】
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
力くんが来たんだ。
私は涙の跡を消すように顔を洗った。何度も、何度も。
「綾乃…?おじゃまします。」
「いらっしゃい、力くん!さ、あがってあがって。」
今日に限って両親は仕事で家に居ない。
広いリビングに居ても仕方無いから、例年通り私の部屋へ招き入れた。
「…相変わらず洒落っ気のない部屋だな。」
「だってめんどくさいし…」
嘘。本当はもっと飾り付けする予定だったんだよ?
私だって高校生になったんだから、部屋だって綺麗にするもん。
私はいつものように笑って、明るく振る舞うようにしていた。
「あ、そういえばさっき商店街で谷っちゃんが"綾乃が居た"って言ってたんだけど………って、どうした!?」
(―あれ…?)
気づけば私の頬には、ひと粒の涙が伝っていた。
「あれ…なんでだろ………おかしいな」
拭っても拭っても涙は止まらない。
―嗚呼、力くんの前では泣きなくなかったのに。
「…何か今日の綾乃、変だと思ったんだよ。俺が来た時もいつもと違ったし……何かあったのか?」
そんなに優しくしないで…。
力くんはいつも私のお兄ちゃんみたいな存在で、私の大切な人だった。
でも、力くんには私より大切な人ができた。
力くんが幸せなら、それは良いことじゃないか。
でも―……
「ううん…何でもないの…!何でも―――……」
…私はそれでいいの?
「なんでも……なくない…っ」