第6章 *君と手をとって【夜久衛輔】
「いや〜、でもいいじゃん!なんか楽しそうだし。」
前の競技が終わり、入場の音楽が流れている間も私たちの会話は続く。
「そりゃあ盛り上がりはするし、楽しそうだとは思うけど。」
「なら全然問題ない!むしろ選ばれてラッキーだって思わなきゃね。」
駆け足で入場しながら肩に手を置くと、夜久は呆れたように"なんだよそれ"と笑った。
入場の音楽が止まり待機位置に腰を下ろす。たったそれだけのことでも少しだけ緊張感が溢れてくる。
高校生活最後の体育祭だし、何が何でも頂点に立ちたい………いや、立ってみせる………!!
「綾乃………………勝つぞ。」
なんだかんだでやる気に満ちた目を煌めかせて夜久が伸ばしてきた手を―
「……もちろん!!」
私が思いっきり叩いて返した……………………と同時に何故か夜久は眉をひそめた。
「ちげーよ馬鹿!手繋げよ!」
「………………はい!?」
―と思えば今度は訳のわからないことを言い出した。
夜久くん、あなた急に何を言っているの?大丈夫??
「えっ…お前まさかルール知らねぇの…?プログラム冊子ちゃんと読んだか?」
「いや、読んでないけど。」
「なんで読んでないんだよ…!!"障害物競争は男女ペアで出場し、競技中は必ず手を繋いで離さないこと"がルールだって書いてたのに…。つか去年も同じのやってたんだから知ってるはずだろ!?」
「そんなの初耳だし!去年寝ちゃってたから知らないし!!」
こんなことは勿論想定外で戸惑いを隠せない私に、夜久は呆れた様子でため息をついた。