第6章 *君と手をとって【夜久衛輔】
《―――お知らせします。プログラム8番、障害物競争に出場する生徒は入場門に集まってください》
雲ひとつなく、青く澄み渡る空。競技場に響き渡るアナウンスの声。
今日は待ちに待った音駒高校体育祭。
毎年学校の近くにある競技場を貸しきって行う、イベント好きの私にはたまらない一日だ。
真夏日と言っても過言ではない灼熱の太陽の下、私は放送に促され入場門へと向かった。
「おっせーぞ綾乃!」
「ごめんごめん!応援に夢中になっててさ〜。」
入場門で私を待ち受けていたのは同じクラスの夜久衛輔。男の子にしては少しちっちゃ………………ンン"ッ、小柄な方。
ちなみに、彼も障害物競争の出場選手である。
「でも、準備運動はバッチリだよ!選手に選ばれたからには負けてられないもんね。」
「…俺は未だにあの選手決めには納得してないけどな。」
―――
選手決め。それは一見どうでも良さそうに思えるが、実は結構重要なイベントの一つである。
私たちのクラス…3年5組の選手は、あらゆる作戦を練りに練って選ばれたのだ。
障害物競争は男女ペアで出場選手を決めなければいけない。私のクラスでは、ペア種目=ある程度の意気の投合性が必要である、と分析された。それに加えて、障害物をひらりと交わす運動神経も必要になってくる、らしい。
そういう理由もあってか、男子の出場者は小柄で身軽な夜久になった。
その後は夜久となるべく同じ身長で運動が出来る女子を探せば良いだけ。
そこで選ばれたのが私、谷口綾乃である。少しだけ不安だったものの、女子バレー部の綾乃なら夜久との相性もバッチリだよね!とクラスメイトに期待され、あっさりと引き受けてしまった。
―――
夜久はその選考理由が気に食わないらしく、ムッと口を尖らせた。