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【HQ!!】短編集。

第5章 *愛を込めて、花束を。【黒尾鉄朗】


いや、わかってたよ?わかってましたとも。
学校に縛られない貴重な休日を持て余してる学生なんてそうそういないってこと。
ましてや私たちは高校3年生。
いくらお互い既に推薦で進路が決まってるからといっても一応受験生なわけだし、気は抜けない。


……でも、年に一度のバレンタインデー。
わざと気にしてないような素振りは見せたけど、実は結構落ち込んでる。


だって、ちょっとだけ憧れてたんだもん。
片思いの女の子が、綺麗に包んだチョコレートを握りしめて緊張している姿。
両思いの女の子が、相手に喜んでもらえる様に色んな工夫をこなす幸せそうな姿。
バレンタインデーを迎えた女の子はみんな、普段とはどこか違ってて、きらきらしてて…。
羨ましかった。きっと私、案外ロマンチストなんだよ。


だから私も彼氏ができて、初めてバレンタインデーを迎えた時には絶対頑張ろうって、チョコレート作って手渡ししようって………そう決めてたのに。
もしかしたら予定空けてくれてるかも…なんて期待も、全くしてなかったと言えば嘘になる。
なのにこんな日に限って既に予定が入ってるだなんて、神様も意地悪だ。



「…鉄朗のばか。」



私のひとり言は誰に届くわけでもなく、静かな部屋に溶けて消えた。
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