第5章 *愛を込めて、花束を。【黒尾鉄朗】
2月14日、土曜日。
今日は世に言うバレンタインデー。
日本では、女性から男性へ愛の告白と共にチョコレートを渡す…という風習がある。
最近では義理チョコや友チョコを用意する人も増え、良くも悪くも何かと慌ただしい行事である。
私も現役女子高生。
今までは面倒くさくてずっと貰う側にまわってたけど、今年ばかりはそうとはいかない。
意を決して携帯を手に取り、ある人を呼び出した。
「…もしもし?」
「おはよ黒尾、随分眠たそうじゃん。」
「まぁな……で、用件は?」
電話に出たのは黒尾鉄朗。
同じクラスの同級生であって、私の彼氏。
寝起きだったのか、彼は電話越しでも分かるくらいの大きな欠伸をした。
「あのさ…いきなりなんだけど、今日、会えたりしない?」
「今日?…なんでまた。」
「だってほら、今日バレンタ………っじゃなくて!!
なんだっていいでしょ!とにかく会いたいの!」
「へぇ…可愛いこと言ってくれるじゃん?
……けど、悪い。今日は無理だ。」
「…何か用事でもあるの?」
「あー……うん、まぁな。悪い。」
「別に謝んなくてもいいけど…わかった。こんな朝早くからごめんね、じゃ!」
…………おわった……。