第4章 *はじめてのキスは【岩泉一】
「………ん」
数分後、私はすぐに目を覚ました。
いつの間にか保健室に連れて来られたらしく、私はベッドに横になっていて、その上には毛布が掛けられていた。
「…あれ、私…たしか部活してたはず……。」
まだ少しボーッとする頭で今までのことを思い出そうとすれば、保健室の入口辺りから声が聞こえて思わずバッと振り向いた。
「お前……っ起きたのか。」
「岩泉先輩!」
その声の主でもあり私の彼氏でもある岩泉先輩がズンズンとこちらに近づいて来て、ベッド脇の椅子に座った。
「もう平気なのか?」
「平気、って………何がですか?」
「ハァ!?お前さっき急に倒れただろ!部活中!!」
有り得ない、といった表情で言葉を放つ岩泉先輩。
…あぁ、思い出した!そういえば岩泉先輩に見惚れてたらいつの間にか倒れちゃったんだった。
岩泉先輩が保健医に聞いた話によると、私が倒れたのは貧血が原因らしい。
…それにしても…やっぱり岩泉先輩がここまで運んでくれたのかな?ていうかこの時間だとまだ部活終わってないんじゃ……
「岩泉先輩、部活は…?」
「あ?急に倒れたお前を1人に出来るかよ!」
…なんて男らしいんだろう。岩泉先輩はいつも突然に私の心を射止めてくる。そんな気持ちと同時に、私の心には罪悪感も生まれた。
それってつまり……私にずっと付き添ってたってこと…だよね。私のせいで岩泉先輩の大事な部活の時間をとっちゃったってこと……だよね。
「…すみません。」
「なんで綾乃が謝んだよ。」
「岩泉先輩にとって大事な部活なのに…私のせいで…。」
自分でもビックリするほど珍しく弱々しく話す私から岩泉先輩は目を逸らさず、少しだけ眉間にシワを寄せた。
「…まぁそれもそうだな。」
嫌われちゃったかな。怒ってるかな。
そんなどうしようもない不安が一気に私の中をぐるぐると駆け巡った。これも全部自業自得…なんだけど。
「…でもよ」
少しの沈黙が続いた後、岩泉先輩が口を尖らせて呟いた。