第4章 *はじめてのキスは【岩泉一】
「足動かせ足ィー!!」
「オーライオーライ!!」
バレーシューズの擦れる音が心地良く響く体育館。青葉城西高校排球部は今日も一生懸命練習に励んでいる。
部活(特にバレー!)に青春を捧げる男子高校生ほど、かっこいいものはない。親バカならぬチームバカ的な発想だけど、うちの部員はみんな誰がなんと言おうとかっこいい。
そんなことを考えながら、私もせっせと自分の仕事をする。勿論考えていることを表には出さないように。
ついつい岩泉先輩ばかりを見てしまいそうになる時もあるけど、これでも私は青葉城西高校排球部唯一のマネージャー。そんなことが許される訳がない。選手1人1人のことは平等に愛している自信がある。
それでもやっぱり、自分でも無意識にひいきしちゃってるときがある。それがまさに今。いつの間にか私の目は特定の人を追っていた。
―…今日の岩泉先輩は何故かいつもより一段とかっこよく見える。気のせいだろうか…?
心なしか何か眩しい…というかクラクラする。
パチッ
岩泉先輩と目が合った。
…?そわそわとした様子で私をチラッと見ている。どうしたんだろうか。
―…ぁ、何か目眩がしてきた……まさか…岩泉先輩の眩しさ故の立ち眩み……?
パチッ
また目が合った。
と思ったら今度はすごい形相で此方へ歩み寄って来る。
―……体に力が入らなくなってきた……なんで……?
岩泉先輩がどんどん近付いて来た。何かを言ってるようだったけど聞き取れない。
…おかしい……瞼が重くなってきた……………もう…ダメだ………
耐え切れなくなり瞼を閉じると、抱きかかえられる感覚と共に、私の名前を呼ぶ岩泉先輩の声だけが脳裏に響き、私はそのまま意識を手放した。
後に青葉城西高校排球部員は語る。
「人が倒れる瞬間を見たのは初めてだ」と。