第4章 *はじめてのキスは【岩泉一】
私の一世一代の告白の結果は―――
「俺も…谷口が好きだ」
―これは夢かと思った。
1年間ずっと暖め続けた恋が、実ったのだ。
このときの、少しだけ頬を赤らめてガシガシと頭を掻きながら、照れくさそうにはにかむ岩泉先輩の姿はとても可愛らしくって、今でも鮮明に覚えている。
その日から私と岩泉先輩は、お付き合いを始めた。
それからは毎日が楽しくて、幸せだ。
部活が終われば私の家まで送ってくれたし、部活がない休日も会いに来てくれた。
付き合い始めて4ヶ月経った今でも、その気持ちが変わることはない。
でも、1つだけ。
たった1つだけ悩んでいることがある。
それは――
私と岩泉先輩は まだ1度もキスをしたことがない。ということ。
まぁ…キスをするにしても雰囲気とか、タイミングとかがあるのは分かる。
けど、私と岩泉先輩が付き合い始めてもうすぐ5ヶ月。
今までに時間を見つけてはデートをしたし、部活帰りだって2人きり。幾らでもチャンスはあったハズ。
なのに、キスをしたことがない。
1度だけ私からしてみようと試みたことはあったが、見事に及川先輩の邪魔が入ったので無効になってしまった。
こんな不純な悩みを抱えているなんて、岩泉先輩が知ったらどう思われるだろうか。
でも、だけど、仮にも私達は思春期だし…。
私もそれなりの覚悟をして、岩泉先輩と付き合っているつもりだ。
…岩泉先輩は、私のことをどう思っているんだろう。