第3章 *あめあめふれふれ【及川徹】
賑やかな及川が帰って、再び静かになった梅雨空の下。
私は1人、葛藤していた。
あえて突っ込まなかったけど、たしかに及川は言った。
仕事はすぐに終わった、と。
…じゃあ何でこんなに遅くまで残っていたの?
仕事が終わったのなら帰っても良かったハズだ。
なのに、なんで?
―…まさか私を待ってたとか?
いや、それはない。ありえない。
―…じゃあバレーの自主練?
あ、これはありえるかも。
………でも制服だったし、汗もかいてなかった…。
そもそも私は、及川とちゃんと喋れていただろうか。
1日に1回は必ず会話を交わしているけど、全然慣れない。それどころか何故か緊張は募るばかりだ。
…もし雨が降っていたら、一緒に帰ることができたかもしれない。
いや、やめよう。それは私のキャラじゃない。
でも、それでも―………
「………予報通り、雨が降れば良かったのに。」
薄暗く広がった雲に覆われた空を見上げ、1人ぽつりと呟いた。