第3章 On the side
部屋のドアを開けても中は暗い。
脱ぎ散らかされたパンプスを揃え、息をつきながら靴を脱いだ。
「アオ?」
リビングの明かりを点ければ浮かび上がる恋人の姿。
だが彼女は床に座りながら、ソファーへ組んだ腕と頭を乗せて眠っている。
「……今日も残業か…」
フッと小さな笑みをこぼしたローは、上着を肩に掛けてやり頬をなぞった。
このところのアオは仕事が定時に終わらず、残業残業の毎日。
家に帰っても疲れのせいで食事する気も起こらず、もはや寝るために戻っていると言っても過言ではない。
そんな毎日だから、ストレスも溜まる一方なのだろう。
『会いたいよ…っ…ロー…ひっ…く…』
昨夜、携帯の留守電に吹き込まれていたメッセージに、ローが動揺したくらい
アオの声は聞いたことがない程、ボロボロだった。
それで、心配したローは仕事が終わってすぐ、此処、アオのマンションへ来たのだ。
「……ま、起きたらたっぷり相手してもらうからな……ゆっくり寝てろ」
寝息しか返さない唇に、己のそれを重ねた。