第1章
ここまでは竜崎の思い通りなの?日々のストレスと疲れからかつい流されてしまったけど、お酒を飲んで楽しく過ごす以上の事はしたくない。竜崎も捜査員の一人とあやまちを犯して捜査に支障が出る事は望まないだろう。
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「こちらです、どうぞ」
彼がレディーファーストで私を招き入れる。
竜崎の寝室は確かに私たちが普段利用している仮眠室より豪華な作りだった。というよりもホテルの一室だった。
リビングの向かい合わせに置いてあるソファの真ん中には、簡素ながら良いものだと分かるガラス製のローテーブル。一人でかけるには充分すぎる大きさの皮のソファに促されるまま座らされ、室内を見回しているうち竜崎は台所のほうからワインボトルとおつまみの乗ったトレーを持ってきた。
ベガシ・シリア・ウニコ。しかも80年代物とはさすがに良い趣味をしている。軽く6桁はするであろう。
「こんな良いお酒、私なんかと飲むには勿体無くないですか?」
「そんなことありませんよ。どうせ飲むなら綺麗な方とが良いです」
こういうことをサラッと言ってしまうのがズルい。
「今夜は飲みましょう」
優しい声。わざと使い分けてるんでしょう?久しぶりのお酒、しかも高級品を目の前に気分は既に高揚気味で、私は思わずはい!と笑顔で答えていた。