第1章
竜崎はいつもの淡々とした調子で続けた。
「疲れませんか。毎日のように残業をしていますが、ここは既に警察庁から離れた組織ですし、今は事件の進展も見られません。もう少し気楽にしても良いんですよ」
「ご心配ありがとうございます。…疲れているのは否めないですけどわたしは仕事が大好きですし、キラを捕まえたいという気持ちは竜崎と一緒だと思います。…私には事務しか出来ませんが」
「事務も立派な仕事ですよ。貴女の熱心な姿勢は私としても有り難い限りです。ところで」
「なんですか?」
「私の記憶が正しければ、新宿区から夢さんが住む浦和区までの終電が発車する時間まであと1分と30秒程度です」
あっ!と思わず声が出そうになった。時計を確認するとまさにその通りで、駅まで走ったとしても4分はかかる。
「やらかしました…今日は帰るつもりだったんですけど。また仮眠室泊まりですね」
はは、と苦笑してみせる。
「夢さんさえよければ、仮眠室よりも良い施設で眠れますよ」
竜崎は表情を崩さない。
「…と、いうのは?」
「私が普段利用している寝室です」