第11章 光
「ふふっ、山崎様は面白いですね。褒めて下さってるんですよね? ありがとうございます」
「ああいや……すまない、口下手で。どう上手く伝えればいいのか、わからなかった」
「いえいえ。懸命に伝えてくれようと必死になるお姿は、とても嬉しいものでしたよ」
「そ、そうか……君がそう言うのなら」
周りが思わず照れてしまうようなやり取りに、店内は何故だか志摩子達がその視線を独占する。なんだか店内もそんな二人に感化されたように、男女が仲睦ましく品物を選んでいた。
突如、見知った人物が店内へと足を踏み入れる。
「すみません! 少し、お尋ねしたいことがあるのですが」
その人物は、千鶴だった。しかしその直後、店内の雰囲気が変わったのを悟る。山崎は徐に志摩子の手を掴んだ。
「山崎様?」
「すまない、君に協力してもらったというのに。どうやら無駄になりそうだ」
その言葉と同時に奥から一人の男が現れ、千鶴を見て顔色を変える。
「こいつ! 先程新選組と一緒にいた奴だ!」
いきなり抜刀する。店内は当然だが、騒然とし始め客達が慌てて逃げていく。間一髪攻撃を避けた千鶴だったが、すぐに次がやってくる。しかしその攻撃は、志摩子が咄嗟に山崎の手を振りほどき、千鶴の腕を掴んでは自分へと引き寄せたことで避けることが出来た。
「なんだ? 貴様。女の癖にでしゃばるのか!!」
千鶴を庇うように、志摩子は彼女の前に出る。自分が何も出来ないことくらい、一番わかっている。それでも、そのまま大人しく見ていることがどうしても出来なかった。