第40章 旗
「何もかも、自分の思い通りに行く世界など存在しない! それでも俺達は、前に進む。己の信じた、ただ一つの道をひたすらに歩き続ける!! それが……生きるということだッ!!」
何かを守りながら、その中で守れないものを知り自分の無力さを痛感する。この手はとても小さい。大切な人を一人、守るだけでも精一杯でその一人でさえ満足に守り切れるのかさえ怪しい。けれども、己の中にある信念を貫くため、誰かを守るため、迷いながら戸惑いながら悩みながら手を伸ばしてみる。
最初は拙いものかもしれない。それでもいい、前へ踏み出せ。
「あんたは俺が……此処で終わらせる……――ッ!!」
互いの刃が交差する。
天の刃は、軽く斎藤を掠っていく。だが、斎藤の刃は鋭く天の心臓に向かい真っ直ぐに突き進む。まるで斎藤の、信念を貫こうとする心のように。己の心臓が貫かれる刹那、天は目を閉じた。
肉が切れる音、畳に大量の血が広がっていく。途端、天は大きく咳込み血を吐いた。
「姉様……」
小さく息をして、天は辛うじて志摩子へと手を伸ばす。
「ボクは……姉様に……ただ、焦がれていたんだ。真っ白で、太陽みたいな……貴方、に……」
斎藤が刀を抜くと、重力に従い天は畳へと突っ伏す。斎藤は一歩距離を置き、刀身についた血を払う。受けた肩の傷を抑えながら、その場に座り込んだ。
「一様……っ!?」
慌てて志摩子が駆け寄ると、斎藤は荒く呼吸を繰り返し胸元を押さえていた。もしや、これは……? 志摩子は懐から小刀を取り出すと、迷うことなく自分の腕を傷付けて血を流した。