第39章 燈
「一様っ!」
「志摩子……」
志摩子はそのまま斎藤を抱きしめると、存在を確かめるように強く腕を回した。一瞬斎藤は戸惑った表情を見せるものの、志摩子の小さな身体をそっと抱きしめた。
「一様っ、総司様から聞きました! 新選組を離れたと」
「……総司のやつ、また余計なことを」
「一様にとって、新選組はかけがえのない場所のはずです。どうして、そんなことに……」
「確かにその通りだ。俺は、死ぬまでずっと新選組と共に在り続け、この身を捧げるつもりでいた。ずっとそうなのだと、思っていた」
少しだけ身を離して、斎藤は優しく志摩子の頬に手を添えた。
自らも刀で在り続けること、そのことに疑問など覚えたことはなかった。そのはずだった。志摩子と出会い、同じ時を過ごす度に感じる僅かな感情の変化に気付いた時には、何もかもが変わり始めていた。それは、受け入れ互い感情ではなく。心地よくて、切ない感情だった。
志摩子が誰かと共にいると、心の奥がざわついた。傍に居ると、もっと一緒に居たいと思うようになった。この想いの名を、知らないままでいたのに。
「俺は、志摩子が好きだ。お前をずっと守っていたい、傍に……傍にいさせてほしいんだ」
斎藤はゆっくり顔を近づけると、志摩子の額へと口付けを落とした。