第39章 燈
「何が誠だ……俺が全部そのくだらない信念とやらごと、叩き斬ってやるっ!!」
「お前にはけして斬れない!!」
瞬時に南雲の攻撃を避けると、斎藤は一気に懐へと踏み込んで南雲の心臓を貫いた。南雲はゆっくりと刀から手を離すと、からんっと音と共に南雲の刀が地へ落ちる。みるみる内に彼の姿は、鬼から人へと変わっていく。
「あの時の俺と同じだ。お前の刀は軽い」
「な……ん、だ……とッ」
「守りたいもの。この重さは、その差だ」
「俺が、人間ごとき……に……っ」
斎藤が刀を抜くと、ゆらりと南雲の身体は倒れる。それでも、南雲は最後の力を振り絞り、薄れ始める意識の中、視界に微かに映る千鶴へと這って行く。
「ちづ……る」
それに気付いた千鶴は、一瞬どうしたらいいかわからなくなるが、無意識に南雲へと手を伸ばし言葉を発していた。
「薫……?」
すると、南雲は一筋の涙を零して……微笑んだ。
「やっと、俺を……見て……ちづ……」
瞼を閉じると、南雲はそのまま動きを止めた。ぴくりとも動かなくなり、千鶴は南雲へと駆け寄った。そっと、彼の手を包み込んでは静かに涙を流す。まるで自分の片割れを失ってしまったかのように。
「薫……」
そんな二人を視界に入れながら、斎藤は刀を鞘におさめた。すぅっと姿をいつもの斎藤へと戻る。斎藤が顔を上げた先には、駆け寄ってくる志摩子が映った。