第39章 燈
「今なら変えることが出来ます。そして、やり直すことだって出来るのですよ。ねぇ、南雲様……」
「……っ、知ったような口を聞くな!!」
「……ッ!」
ぐっと力を込め、南雲は更に深く刀を刺す。更なる痛みに顔を歪める志摩子を見ながら、どうにもならない気持ちをまるで吐き出すかのように、南雲は苦しげに叫んだ。
「何もかも、もう遅いんだ!! 今なら変えられる? やり直すことが出来る? やり直しなんて、綺麗ごとだ! 俺の本当の両親は、もう戻ってこない。失ったものは取り戻せない……、ならそんな未来に意味なんてない。二度とあの日々は帰ってこないんだッ!!」
一度南雲は刀を抜くと、志摩子をそのまま斬り殺さんとするかのごとく、大きく振り上げた。――途端、勢いよく襖が開かれる音がした。同時に、南雲の刀が何者かのよって薙ぎ払われた。
「……っ、誰だ!?」
南雲が鬼の姿に変わり、その者へと視線を向けた。
そこに現れたのは、斎藤だった。
「一……様?」
「志摩子」
肩を押さえ、志摩子は何とか斎藤へと視線を向けた。その瞳に映る彼の姿が、幻なのではないかと。志摩子は数回瞬きを繰り返す。斎藤はゆっくりと南雲と距離を詰めて志摩子を庇うように立ちはだかる。