第39章 燈
志摩子のいる部屋に、気を失った千鶴が南雲の手で放り込まれる。
「千鶴様!?」
「……ほんと……嫌になるよね。どうしていつの時代も、人間は身勝手なんだろうね。そうは思わない? 蓮水志摩子」
「……っ、身勝手なのは鬼も人間も変わりはありません。そこに変わりがあると思うから、そう感じるだけなのです。今だってこうして、貴方達鬼は身勝手に人の世を侵そうとしている。それの何が身勝手ではないというのです!?」
「……」
南雲は思い切り志摩子の頬を殴った。その衝撃で、志摩子は部屋の隅へと飛ばされる。痛みに耐えながらも、志摩子は真っ直ぐと臆さない瞳で南雲を見つめている。その瞳が気に食わないのか、南雲は更に志摩子の身体を蹴り飛ばした。
「……っ」
「生意気な口を効くじゃないか。お前は自分の現状をいまいち呑み込めてないらしい」
「……あッ」
南雲は刀を抜くと、躊躇いなく志摩子の肩を突き刺した。痛みに顔を歪め、小さく志摩子は悲鳴を上げた。
「人間さえいなければ、俺達雪村家はもっと違う未来を歩けたかもしれない。奪われたから、奪うだけだ。それの何が悪い? それさえも身勝手だというのか!!」
「奪われたから、奪うのですね。そうして奪ったものはいつかきっと誰かの手で、また奪われるだけです。奪い合いに終わりはありません。過去は変えられません、貴方の痛みを私が知ることはけしてありません。それでも……」
痛みに耐えながら、志摩子は南雲へと徐に手を伸ばした。