第38章 動
「志摩子を蓮水家から切り離す為には、護身鬼との契約を解く他ない。その唯一の術が、護身鬼全てを殺すこと。そうすれば、自然と契約は消え志摩子を縛り付けるものは何もなくなる。俺は……あやつを自由にしてやりたいだけだ」
「何故、そこまでして風間は志摩子を……」
「深い意味も理由もない。ただ、志摩子の笑顔が……眩しかっただけだ」
風間は遠くを見つめて、それ以上を語ろうとはしなかった。だが今だから斎藤にも、わかるkとがある。志摩子の笑顔をもう一度見たい、彼女のいる場所へいつだって戻りたいと思わされる。新選組の屯所で、いつも太陽のような笑顔で迎えてくれていた彼女のことを思い出す。
ああ、彼も自分達と同じなのだと。そう思うのだった。
「そろそろ動くぞ。出来るだけ早く仙台に着かねば」
「ああ、わかっている」
斎藤が沖田を見れば、少し落ち着いた様子の沖田が軽く頷いた。それを合図に三人は再び歩き出そうとした、だが。
突如羅刹隊の中に飛び込んで、鬼のごとく斬りこむ一人の男の姿が現れる。その者は羅刹と同じ、白髪に赤い目を光らせていた。風間は何事かと溜息をついたが、斎藤だけが一歩乗り出して言葉を漏らした。
「あれは……副長?」
「何? 新選組の土方、だとでも言うのか」
「間違いない。あの洋装、副長に違いないが……。どうしてこのような場所に」
「放っておいていいのか? この羅刹の量。果たして一人で捌き切れるか」
「だが俺は……」
「はいはい、一君は志摩子ちゃんのことをお願いね」
「総司!?」
沖田が抜刀しその場へと飛び出して行く。