第34章 離
だが、近藤と折り合いがつかなくなっていた永倉を筆頭に原田もまた、集まって早々離脱の話を近藤に突き付けたのだった。今まで長く、戦い続けて来たはずの二人が此処で別れてしまう。寂しさはあるものの、少なくとも幹部達には心の何処かでいつか来るかもしれないと予感はしていたようだ。驚いた顔を見せたのは、千鶴だけだった。
◇◆◇
「これ以上、江戸に留まり続けるのは限界だな」
唐突に、土方が言葉を漏らした。幹部には既に、近藤、土方、山南、平助。そして斎藤の五人だけとなっていた。その場には千鶴も、顔を見せていた。土方の言葉に、誰もが軽く頷いた。
「今、江戸城にいるお偉い方さんは完全に戦う気をなくしちまってる。ここでくすぶって戦の機会を逃すより、まだ戦う意思が残ってる連中と合流する方がよさそうだ」
「ということは、会津に行くのですね」
斎藤が土方の言葉に、反応を示す。
「新政府軍の奴らのやり口が気に食わねぇって連中は、いくらでもいる」
「で、どういう段取りを踏むつもりなんだ? 会津って結構遠いよな」
「平助の言う通り、確かに会津は遠い。まぁそこは、松本先生の知り合いの金子って人の家があってだな……そこをまず拠点にして、少しずつ武器弾薬、一般隊士、羅刹隊のを徐々に金子邸に移動させていくつもりだ」
「なるほどね! ま、いきなり何もかもを会津に運び込むのは無理だもんな」
「副長、千駄ヶ谷にいる総司はどうするおつもりで?」
「……先日近藤さんと様子を見に行ってみたんだが、いなくなっていた」
「なっ……」
その場にいた誰もが、土方を見て目を丸くする。沖田は病のせいでずっと床に伏せていたはず、満足に動ける状態にないというのに……。