第34章 離
「な、なんだこいつら!?」
「新八離れろ! そいつら、ただの人間ではない!!」
斎藤が声を上げる。それに反応し、永倉は一歩飛び退いた。みるみるうちに、敵の髪が白く染まり瞳は赤くなる。原田が武器を構えた。
「どうなってんだ!? これは、羅刹じゃねぇか! 昼に動ける羅刹なんて、聞いたことねぇぞ!」
「左之! そっち行ったぞ!!」
「わかってるよ新八!」
次々と襲い掛かる新手の羅刹部隊に困惑しながらも応戦する。だが他の隊士達は次々と羅刹の餌食となり、息絶える。このままでは、全滅もありえるかもしれない。斬っても斬っても、何事もなかったかのように立ち上がる敵に原田が斎藤へと振り返る。
「斎藤、このままじゃまずい。てことで、例の件宜しく頼むわ」
「例の件……?」
千鶴が首を傾げて斎藤を見れば、彼は既にわかっているようで千鶴へと顔を向けた。
「雪村、お前は俺と一緒に来い。もしもの時は二人で先に逃げるよう、土方さんに言われている」
「で、でも……! 他の隊士さんを残して私達だけ逃げるなんて……」
「お前が此処に居ても、足手まといにしかならない。いいから来い」
すると原田が呆れたように言葉をかける。
「おいおい、もうちょっと言い方を考えてやれ。……そういうところ、ところん気がきかねぇのな」
「千鶴ちゃん、俺達のことは心配しなくていいぜ! わかってんだろ? 俺達が、滅茶苦茶強いってこと」
「原田さん、永倉さん……っ」
千鶴は勢いよく二人に頭を下げ、斎藤の背中を追うように走り出した。だが二人の退路を塞ぐように、羅刹隊が回り込んでくる。そして……羅刹隊の後ろから、千鶴のよく知る人物が姿を見せた。