第25章 幸
雨が降る。大粒の涙のように降り注いでは、俺の身に浴びせられた返り血を洗い流すように。頬に流れ落ちる滴を払うように、俺は血で汚れた手で拭う。
「風間様、何故貴方は蓮水家に関わろうとするのですか。そんなに北国の鬼に、恨みでもあるのですか?」
「蓮水の護身鬼が江戸で身を隠しているという話は、どうやら本当だったようだな」
「それとも……志摩子様に興味でもあるのですか?」
「さあな、どちらでもよいだろう? お前は今此処で俺によって殺される。知る必要などない」
「貴方は……護身鬼を俺と合わせて、何人手にかけたのです」
「ふん……。つまらんことを聞くな」
俺の刃は真っ直ぐと目の前の男に突き刺さる。男は抵抗しない、俺に勝てないとわかっているからなのか……それともまた別の理由なのか。
「……っ、風間様! どうか……どうか志摩子様を、俺達の呪縛から……救って頂きたい」
「無論そのつもりだ。護身鬼は残り、二人」
「もしや残っているのは栄様と天様……か?」
「貴様は利口な鬼のようだ。流石、蓮水の頭脳と呼ばれていた男……というべきか?」
「ははっ、御冗談を……。ぐ……っ、俺は所詮……栄様の御飾でしかない」
「貴様に問うておきたいことがある」
「なんです……?」
目の前の男は、白髪に色を変え瞳の色が赤く染まる。ああ、なんと忌々しい。