第23章 華
「志摩子……? お前が先だったか。大丈夫か?」
「一様? ど、どうして此処に?」
「何故か平助達が乱闘を起こしているため、内偵を続けるのが困難になった。故に、もし雪村とお前が逃げて出て来るとすれば此処に違いないと……待っていた」
「そうだったのですね……助かりました」
「斎藤! これはどういうことだ!?」
その場に土方までも集まってくる。もう内偵ではなくなってしまっていた。
「副長、俺は志摩子を連れて先に戻ります。後で、きちんとご報告をさせて下さい」
「わかったが……千鶴は?」
「そろそろ出て来る頃かと思います。副長は、雪村を頼めますか?」
「わかった。早く行け」
志摩子は土方へと会釈し、斎藤と共に屯所へ向かい先を急ぐ。土方は志摩子達を一瞥すると、ぼそっと呟いた。
「……志摩子のやつ、至極当たり前のように斎藤に着いて行きやがって……。妬けちまうな」
呟いたと同時に、千鶴が姿を現した。
「あっ、土方さん……!」
「千鶴……か?」
「はいっそうです」
目を丸くする土方だったが、すぐにふっと笑みを零した。
「なんだかなぁ……」
◇◆◇
風間のお陰で芸妓の着物を脱いでいたお陰か、志摩子達は何事もなく島原を抜けることに成功する。そこからは慌てる必要もなくなったため、静かに歩いていた。