第22章 遙
「一様は、そうなった時どうするのですか?」
「俺か? さあ……今はまだ、わからない。だが先程も言った通り、時は移ろう人もまた同じ。その時の俺が、今とは同じ選択をするとは限らない。志摩子も……そうなのではないか?」
「私は……変わるものと、変わらないものがあると思うのです。人は変わる、けれど変わらないものだってきちんとあるはずなのです」
少しだけ寂しそうな声色で言葉を紡ぐものの、彼女の表情は至って穏やかだ。斎藤は目を細め、志摩子の横顔を見つめていた。
「変わらないものこそ……私は、信じていたい」
この頃、新選組は幕府からの様々な命をこなしながら、今までの新選組から少しずつ形を変えようとしていた。それに対して、まったく不満のない隊士がいないはずもなかった。
変わっていくものに、対応できなければいずれ失っていくのみ。変わることを受け入れるのか、それとも変わっていくことを拒絶し反発するか。多くは後者に当てはまるだろう。新選組隊士も、同じく。
それを良しとするように、伊東は密かにそんな隊士達を一部個人的に呼び出し声をかけている現場を山崎が目撃していた。それもあってか、土方の耳にもその事態は入ってくる。
だがすぐには手を打たない。確証がないからだ。今問い詰めようとすれば、それこそ伊東の思う壺かもしれない。その時を待つしか、方法はなかった。
それに人の思想を、誰かが縛ることは出来ないだろう。
ならば斎藤の言うように……――
思想が完全に違え、互いに受け入れられなくなった時。やはり別れる他ないのかもしれない。