第21章 真
「副長を連れて帰ろう。屯所に」
「……はい」
「志摩子」
「なんでしょうか?」
斎藤は微笑みながら、真っ直ぐと志摩子を見つめる。いつの間にか雲は晴れ、月明かりが彼の白く美しい姿を照らしていた。思わず志摩子は見惚れてしまう。
優しく微笑む彼に、胸の奥がぎゅっとなるのを感じた。
「お前は俺達の大切な仲間だ。遠慮することなく、共に在ればいい。お前が……望む限り」
「……! はいっ」
運命の歯車は回り出したばかりだ。
そのことに未だ気付くことなく、志摩子は斎藤の隣に並んで屯所へと帰っていく。今までとは少しだけ違う気持ちで。堂々と胸を張って。斎藤はそんな志摩子の少しの変化にも気付いているのか、隣で土方を担ぎながらふっと笑みを零す。
誰もが自分の道に迷いながら、それでも一人ではないということ。
きっとそれだけが、唯一の救いだ。
「私の帰る場所は……ちゃんと此処にあるのですね」
小さく呟いた言葉を、斎藤はしっかりと受け止めていた。