• テキストサイズ

薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第21章 真



「副長を連れて帰ろう。屯所に」

「……はい」

「志摩子」

「なんでしょうか?」


 斎藤は微笑みながら、真っ直ぐと志摩子を見つめる。いつの間にか雲は晴れ、月明かりが彼の白く美しい姿を照らしていた。思わず志摩子は見惚れてしまう。

 優しく微笑む彼に、胸の奥がぎゅっとなるのを感じた。


「お前は俺達の大切な仲間だ。遠慮することなく、共に在ればいい。お前が……望む限り」

「……! はいっ」


 運命の歯車は回り出したばかりだ。

 そのことに未だ気付くことなく、志摩子は斎藤の隣に並んで屯所へと帰っていく。今までとは少しだけ違う気持ちで。堂々と胸を張って。斎藤はそんな志摩子の少しの変化にも気付いているのか、隣で土方を担ぎながらふっと笑みを零す。


 誰もが自分の道に迷いながら、それでも一人ではないということ。

 きっとそれだけが、唯一の救いだ。


「私の帰る場所は……ちゃんと此処にあるのですね」


 小さく呟いた言葉を、斎藤はしっかりと受け止めていた。

/ 359ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp