第21章 真
「……白髪の髪、赤い瞳!? 羅刹と同じ、だと!?」
「羅刹……? そうか、幕府の犬が変若水の研究に一役買っていると聞いていたが。貴様らだったとはな」
「なんだと? どういう意味だ!」
「変若水の研究は、本来俺達北の鬼がしていたことだ。鬼が生き延びていける世界を作るためにな……」
鬼の姿となった栄は、土方よりも更に重い一撃を浴びせる。びりびりと伝わる痛みに、土方が顔をしかめた。
「それを東の鬼にくれてやったのさ。綱道とかいう男にな」
「綱道さんにだと!?」
「これも縁というものなのだろうか……まさかこんなところで、変若水の名を聞く羽目になるとはな。ならば尚更、志摩子を貴様らに預けておくわけにはいくまい!!」
「……ぐっ!」
勢いよく振り上げられた栄の剣が、土方の刀を弾き飛ばす。栄は容赦なく斬り付けると、土方の腹を蹴り飛ばした。土方はそのまま近くの木に、身体をぶつける。
「歳三様!!」
「さあ、志摩子。邪魔者はいなくなった……俺と共に来い」
「……私は行きません!」
「何故だ? 人間と一緒にいたところで、お前のためにはならないぞ。それに……蓮水の女鬼を守るための鬼、護身鬼達がいずれお前の前に現れる。そうなれば俺が今連れ戻さなくとも、こいつらを殺してでもそいつらはお前を連れ戻しに来る」
「護身鬼……?」
「どちらにしても同じこと。お前に自らの運命を決める権利などない!」
「……ッ!」
栄の言葉に志摩子はぎゅっと唇を噛みしめた。悔しい。言い返せない自分も、それを覆す術も持たない自分も。
もう、どうすることも出来ないのだろうか?
一瞬、強い風が吹く。
青白い光が一線、空を切り裂く。途端、鈍い音と共に栄の刀が何かによって弾き飛ばされた。