• テキストサイズ

薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第21章 真



「俺は……汚くて、ずる賢くて……新選組のためなら血で身を穢すことに何の躊躇いもない。怖くなんてねぇ、それが寂しいことだと誰かが言った。でも俺はそうじゃねぇと思う。本当に、最も人間にとって寂しいことは……大切なものを何も守れずに死ぬことだ。少なくとも、俺はそう思う」

「……」

「何かのために何かを犠牲にして、騙し騙され俺はそうやって生きて来た。今お前に見せている俺だって、何処までが本当かわかりゃしねぇ。俺は俺なのか、俺らしいとは何なのか。俺にだってわからねぇのに……お前がわかるはずねぇだろ」


 それでも、と土方は言葉を続けた。俯く志摩子には、彼の表情など見えるはずもなかった。


「俺はお前を求めてる。お前という存在を欲してる。これだけは、この気持ちだけは嘘じゃないって言える! これは俺の確かな本心だ。俺らしいとからしくないとか、関係ねぇ!! これが俺の、俺という人間の心の想いなんだよっ!!!」


 土方はぎゅっと自らの胸元を掴んで、悲痛に叫ぶ。

 志摩子は逃げるように土方に背を向けた。


「志摩子……ッ!」

「そんなこと……言わないで下さい。私は……私は、いつかは皆様の元からいなくならなくてはならないのです。私は千景様と共に歩むと、蓮水の家から出して頂いた時に誓ったのです。私は……あの方と共に、と」

「だから、それはお前の本心なのか? そうなのかって聞いてんだっ!」

「そうです! それが私の本心です!! 私は千景様と共に参ります。栄兄様とは行きません! 私が皆様と共に一緒にいるのは……千景様のお迎えを待っているからです! 私を見つけやすくするためなのです!」

「違う!!」

「違いません!」

「違うって言ってんだろ!」

「私が言うのですから、違うはずがないじゃないですか!!!」

「だったらどうしてお前は医学を学んでいた!?」


 志摩子の肩が震える。何かをまるで、堪えているように。

/ 359ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp