第18章 病
「お話し中ごめんなさいね? 助けてくれてありがとう。と先に言うべきかしらね?」
堂々とした立ち振る舞いの女の子が、志摩子達へと頭を下げた。顔を上げた彼女は、じっと志摩子の方を見つめていた。何となく、見たことがあるような気がして志摩子もじっと見つめ返すと……はっと気付く。
「あれ……貴方」
「お久しぶりね、志摩子さん。私の事、覚えてる?」
「勿論です、千姫様」
彼女の名は千姫。千鶴達にはお千と呼んでほしいと告げる。
「えっと、お千ちゃんは志摩子さんと知り合いなんだね」
「まぁね! お家柄ね。えっと……貴方の名前は?」
「私は雪村千鶴です」
「雪村……。そう、千鶴ちゃんね。宜しく! また何かの機会に会いましょうね」
さらっと挨拶をすると、千姫は笑顔で去っていった。まるで風のように。陽も傾き始めていたため、三人は一緒に屯所へと戻ることとなった。
◇◆◇
隊士も増え、屯所も大きくなったところで今日は珍しく、健康診断が行われることになっていた。女性である志摩子が参加できるはずはなく、とりあえずいつも通り家事をこなしていた。
庭で箒を取り、枯葉を集める。すると、一人裏庭へと消えていく沖田を見かける。
「総司様……そういえば最近、あまり見かけない気がしますね」
ふとそれに気付くと急に心配になってきたのか、志摩子はそそくさと沖田を追いかけ裏庭へと向かった。
ちらりと覗き込むと、沖田の他にもう一人見知らぬ男の人がいる。なんだか深刻そうに話し込んでいるらしく、志摩子はどう入っていけばいいかわからなかった。とりあえずは身を隠し様子を伺っていた。