第1章 (色々な意味で)めげるな!祝え!
「ちょっと菓子作りをしたくてな。
こういう場合お主の許可を取っておくべきだと思って・・・」
エルヴィンの誕生日の時もそうしたが、
ナナシがリヴァイへプレゼントするものとして選んだのは
手作りの『お菓子』だった。
潔癖症のリヴァイは手作りなんぞ嫌がるかもしれないが
(ハンジの手作りは拒否られていた)、
前もって誕生日を教えといてくれない方が悪い。
それに以前リヴァイは甘いモノは嫌いじゃないと言っていたし、
紅茶を練り込んだシフォンケーキだったら食べてくれそうである。
自分の所持している紅茶葉の量は少なかったが
シフォンケーキを作るくらいなら足りるだろう。
それに茶葉が余ったら紅茶のクッキーを焼くのも良いかもしれない。
紅茶尽くしでは芸が無さ過ぎるが、
紅茶のシフォンケーキに林檎の甘煮を入れれば
風味と甘みが増して美味しいだろうし、
ベルガモットも匂い付けとして入れようとナナシは考えていた。
「良いね、お菓子作り。使用を許可しよう。
因みに何を作るんだい?」
「紅茶のシフォンケーキと、
茶葉が余れば紅茶のクッキーを作る予定だ」
「そうか、それは楽しみだね」
笑顔で同意してくれたエルヴィンに安堵したナナシは、
てっきり彼も「リヴァイの誕生日の為にお菓子作りをするのは妙案だね」と
言ってくれているものとばかり思っていたのだが・・・
「君のお菓子がまた食べられるのは嬉しいよ」
「え?」
「ん?」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
どうやら互いに思っていた事の相違があったらしい・・・・。
気まずい沈黙が執務室内に漂ったが、
先に沈黙を破ったのはエルヴィンだった。