第1章 (色々な意味で)めげるな!祝え!
差し出された包みを受け取ったリヴァイが逡巡した後、
クッキーの一枚をナナシの口許にやって
「一枚やるから、俺の休憩に付き合え」
と言ったのでナナシも素直にそれに従い
向かいの椅子に座った。
二人でブラックコーヒーを飲みながら静かにクッキーを頬張る光景は
物悲しいものだったかもしれないが、
リヴァイは元々派手なことを好まないので
静かな空気に満足していた。
「・・・美味いな、これ」
「そ、そうか、・・・口に合って良かった」
「俺はこういう味が嫌いじゃない。また今度作れ」
「あぁ・・・また機会があったらな」
「今度はエルヴィンには言うなよ」
面倒な事になるからな。
穏やかなリヴァイの表情から冗談半分で言っているのだとわかり、
ナナシも破顔する。
リヴァイは時々気を使って冗談を言うので優しい男だと思う。
「どうせなら調査兵団全員に配れるくらいの量を作りたいものだな・・・」
それには領土の奪還や壁外への進出が必要となるだろうが
言うだけならタダだ。
ナナシが夢のような事を言うと
リヴァイはポツリと落とすように笑い「そうだな」と
同意してくれた。