第1章 (色々な意味で)めげるな!祝え!
「・・・エルヴィン、悪いが交換は出来ねぇ」
「何故だ?この酒が欲しくないのか?」
「・・・・・・この菓子はナナシが俺の為に作ってくれた物だ。
それを無下に出来るはずねぇだろうが」
「・・・『俺の為』?」
ビキッと笑顔で青筋を立てるという
器用なことをやってのけるエルヴィンに
リヴァイは何か地雷を踏んだらしいと悟ったが、
怒りを買っても譲れないものがあるのだと対峙する。
「ほほう?『俺の為』か。
因みにナナシがそのお菓子を作るために私は厨房の使用許可を出した。
それなのにナナシは一口も私にくれなかった。
この気持ちがおまえにわかるか?誕生日プレゼントとはいえ、
他の男にやるものを作るのに加担してしまったこの私の気持ちが!
これはもう浮気だ!不倫だ!」
支離滅裂な事を言い出したエルヴィンの姿に
リヴァイは酷く気の毒そうな目を遣り、
こいつ何か薬でもキメてんのか?と疑った。
だが、元々壊れている人格にナナシ病
(リヴァイが勝手に命名したエルヴィン特有の病気で
ナナシの事になると奇行種になる)が加われば、
こうなるのも必然かとも思ってしまう。
リヴァイが何となくナナシに視線を遣ると、
彼は遠い目をしながらそっと耳打ちしてきた。
「リヴァイ・・・済まないが、菓子を酒と交換してやってくれ。
もうこんな幼児退行したエルヴィンの姿を見ておれん。
万が一他の奴らにこの姿を見られたら調査兵団が揺らぐぞ」
「・・・・・・・・・・・」
ナナシの言う事は最もだ。
こういう場合、どちらかがオトナの対応をしなければ
収集がつかないだろう。
エルヴィンにオトナの対応を求めても無駄だと
この状況を見れば明らかなので、リヴァイが折れるしかなかった。