第1章 (色々な意味で)めげるな!祝え!
「この酒と今おまえが食べようとしている
ナナシの手作りクッキーとケーキを交換しろ」
「「は?」」
奇しくもリヴァイとナナシの声がハモった。
いやいや待て待て、おかしいだろ?
入手困難な幻の酒とナナシの手作り菓子をトレードするなど
正気の沙汰とは思えない。
値打ち的に釣り合うものではないだろう。
だが、エルヴィンの瞳孔が開いていて若干狂気じみている表情から
本気で言っているのだというのは伝わってくる。
リヴァイはエルヴィンの持ち掛けた取引に応じるか悩んだ。
折角自分の為に作ってくれたお菓子を酒と交換するなど
相手の厚意を無にする所業だ。
リヴァイの性格上そんな事は出来ない。
だが、エルヴィンの持っている酒は昔から飲みたいと思っていたもので、
この機を逃したらもう飲めないかもしれないというくらい
貴重な代物だった。
リヴァイが思わずゴクリと喉を鳴らすと、
それに気づいたナナシが「好きにして良いんだぞ?」と心配そうに言った。
「このケーキとクッキーはもうお主の物だから
酒と交換しても良いんだぞ?私は気にしないから好きな方を選べ」
―――そんな気を使われたら尚更交換なんか出来ねぇよっ!!
ナナシが本気でそう言ってくれているのはわかるが、
だからと言って本当に交換なんか出来ない。
プレゼントは気持ちだ。
その気持ちをエルヴィンにくれてやっても良いのかっ!?