第1章 (色々な意味で)めげるな!祝え!
紅茶の基本生地に林檎の甘煮を混ぜ型に流し込んでオーブンへ入れると、
作って寝かせておいた棒状のクッキー生地を均等に切っていく。
因みにクッキーには黒糖を混ぜたので
味わい深いものになっているだろう。
あまり甘すぎずブラックコーヒーによく合う
大人の味というやつだ。
作業に没頭しようと心掛けていたが
エルヴィンの眼力が半端ない程突き刺さってくるので、
クッキーを鉄板に敷き詰め終わると
先程シフォンケーキに入れた林檎の甘煮の残りを摘み上げ
エルヴィンの眼前に晒す。
「ほら口を開けろ。そんな物欲しそうな顔していても無いものは無い」
「・・・・・・・・」
エルヴィンはのろのろと口を開けて林檎の甘煮を食べた。
モグモグと咀嚼してポツリと「美味しい」と零す姿は
図体のでかい子供にしか見えない。
・・・が、いきなり手を掴んできて
指を吸うように舐めてきたので、
質の悪い男に成り下がった。
掴まれていない方の手で頭を殴ると相当痛かったらしく
手を離して暫く痛みに耐えているようだったが、
そうこうしている内にエルヴィンを探しに来たミケによって
彼は執務室へ引き摺られて行った。