【CDC企画】The Premium Edition
第4章 Truffe Fraise(銀時)
「じゃーん」
「おー、上がってけ上がってけ」
片手にレジ袋一つを銀時の目線までかざし、アスカは袋越しに透けて見えるイチゴと牛乳を主張してきた。玄関先で陽気なテンションである彼女がそのジェスチャーをすれば、万事屋の主は彼女を家の中へと招き入れる。
どうやら以前にもこのやり取りを繰り返してきたようで、互いに何をするべきか分かっている二人は無駄口を叩かずに真っ直ぐキッチンへと足を運ぶ。そして、これまた当たり前のように、流しと横のカウンターで準備を始めた。
銀時はパックされているイチゴをアスカから受け取り、蓋の役割をしているラップフィルムを外して、赤く熟れてるそれらを蛇口の水で軽く洗う。その作業が始められれば、洗われた一粒一粒をバトンリレーのようにアスカへと手渡した。濡れたイチゴを受け取った彼女は、まな板の上でヘタをどんどん切り落とし、果肉だけとなったイチゴは用意しておいたガラスのボウルに積まれてゆく。そんな単調な作業は、500g のイチゴが全てなくなるまで繰り返された。
下準備に当たるこの工程が終われば、二人の表情にワクワクとした笑顔が改めて浮かぶ。手に付いた水分を気にすることなく、銀時とアスカは食器棚からそれぞれお気に入りのマグカップを取り出す。普段から使っている湯呑みとは対照的に容量が大きいため、二人は遠慮なく5、6粒のイチゴを指で潰しながらマグに入れた。間も無くして、カップの底にはジューシーなイチゴの汁と、それに浸っている細々と崩された果肉が鎮座する。それだけでも良い匂い漂うのだが、二人の楽しみはこれから本番を迎える。
ここで濡れた手を拭いた銀時は、調味料の中から砂糖の袋を取り出した。使いかけの口を閉めていたクリップは取り外し、計りも使わず豪快に砂糖をそれぞれのマグに直接流し込む。目分量ではあるが、だいたい大さじ二杯分くらいの砂糖がさらさらとイチゴに対面し、果汁を吸収して濃い色へと変化する。
使い終わった砂糖を銀時が片付けている間、アスカは買ったばかりの牛乳を開ける。そして砂糖に続けてとくとくとマグカップに注ぎ込めば、そこにはもう完成目前のイチゴ牛乳の姿があった。