【CDC企画】The Premium Edition
第2章 Carré Lait(芳村)
子供しかいないのならば話は別だが、この世には喰べ頃の人間がゴロゴロといる。量を求めるのなら、自分より体型の大きい男。程よい脂が乗っていて、食べやすい青年ならば文句もない。労働(殺し)に見合わない量しか取れない子供など、端から眼中にないのだ。
喰べるとすれば、それは子供が成長期に入った後。頂くなら、しっかりとした肉がついてからでも遅くはない。未熟な雛が鶏に変わるまでなら、さすがの利世も食欲の制御がきく。
脳裏で数年後の少女を楽しみにしながら、読書をしている間に冷めきったコーヒーを啜る。そして利世は新たな獲物を狙うように、意識と視線を芳村から窓の外へと移した。
すると視線の先にはちょうど一人の青年が佇んでいた。利世が振り向いたのと同時に、不自然なほど顔を手持ちの本へと埋もれさせている。その可笑しな行動と青年の色づく頰を確認すれば、利世はニヤリと口角を上げた。
どうやら次の獲物が決まったようだ。見た目は冴えない男子だが、体は申し分ない熟し方をしている。見ている限り、青年も高槻の小説が好きらしく、彼を誘い込むには好都合なルアーになりそうである。
さて、どう頂こうか。
考えを巡らせながら、利世は再び残りのコーヒーを喉に通した。その獲物が彼女にとっても世界にとっても、運命を狂わす悪縁だと言う事も知らずに。
-fin-